インターログを利用したタンパク質間の相互作用解析

駒 寿浩(0351153)


近年、タンパク質間の相互作用データを網羅的に検出する解析手法である、酵母ツーハイブリッドシステムや、プルダウンアッセイシステム等により、膨大なタンパク質間の相互作用データが蓄積されつつある。これらの相互作用データは、タンパク質が担う機能、及び調節関係を明らかとするために重要な情報を含んでいるが、擬陽性データが多いことが問題となっている。そこで本研究では、これらのデータの中から擬陽性データを取り除いた信頼性の高いデータを抽出することを目的とし、Escherichia coli、Bacillus subtilis、Helicobacter pylori、Saccharomyces cerevisiae、Caenorhabditis elegans、Drosophila melanogasterにおけるオーソログ遺伝子間で共通に保存される相互作用について解析をおこなった。オーソログ遺伝子とは異なる生物種に存在する最終共通祖先がもっていた同一の遺伝子に由来する遺伝子のことをいう。これら遺伝子がコードするタンパク質はそれぞれの生物において、同じ機能を持つか、またはよく似た機能を持つことが知られているため、これらタンパク質による相互作用も生物種間で保存されている可能性が高いと考えられる。このようなオーソログ遺伝子によるタンパク質間の相互作用はインターログと呼ばれており、本研究ではこのインターログを利用することで、種に共通のタンパク質間の相互作用を抽出した。結果、195個のインターログを得ることができ、進化的に近い生物種間でタンパク質の相互作用がより多く保存される傾向が得られた。また本解析では更に、得られたインターログを利用してパラログ遺伝子の相互作用についても検証し、分子生物学による解釈及び機能未知の遺伝子の機能予測を試みた。