21世紀COEプログラム●ユビキタス統合メディアコンピューティング●


情報科学センター 戸邉 論

研究課題名
インターネットを基盤とした高度衛星測位環境に関する研究

研究の目的
屋外における測位にはGlobal Navigation Satellite Systems (GNSS) が有効であるが,さまざまな誤差要因により,GNSS単独で得られる位置情報の精度には限界がある.この精度を向上させるためには,基準局と呼ばれるあらかじめ精密な位置が求められている点で衛星からの電波を観測し,そのデータから誤差を補正する情報を生成して測位を行う者に配信することが必要である.
本研究では,衛星からの電波の観測データの収集と分析,および補正情報の生成・提供をインターネット上で行う方法について検討し,インターネットに接続された端末が,GNSSを利用してより安定して高精度な位置情報を取得可能とすることを目的とする.

平成16年度の研究実施計画

すでに,東京湾を取り囲むかたちで設置された5点の基準局から構成される基準局ネットワークの構築は完了し,各基準局における観測データの収集および補正情報の生成が開始されている.今年度は,以下の3点を柱に研究を行っていく予定である.
1. 観測データ分析技術
各基準局で観測されるデータには,電波の伝搬経路上での遅延誤差や,基準局自身の持つ,マルチパスや受信機ノイズによる誤差が含まれたままである.そこで,観測データに対する誤差要因ごとの影響量を推定する手法を確立し,基準局の観測値に含まれるそれぞれの誤差量を要因ごとに分離させ,余分な誤差を含まない観測量から補正情報を生成し配信することによって,より高精度な測位を実現させることを目指す.
2. VRS D-GPS
複数の基準局におけるデータをリアルタイムに処理し,より広い範囲での高精度補正測位を可能にするVirtual Reference Station (VRS) 技術は,これまで主にRealtime Kinematic GPS (RTK-GPS) に対して利用されてきた.RTK-GPSは測量用の技術であり,cmオーダーの測位精度を可能にするものの,可視衛星数の変化や補正情報の欠落に弱く,モバイル環境での測位には向かない.そこで,RTK-GPSよりやや精度は劣るものの,モバイル環境での測位に強いDifferential GPS (D-GPS)を,VRS技術を利用して実現する手法について研究を行い,従来のD-GPSと比較してより高精度な測位を広い範囲で可能とすることを目指す.
3. 実証実験
本研究によって構築されたシステムの仕様やクライアントアプリケーションを公開し,システムの定常運用を開始する.定常運用を通じてシステムの修正・改良を行う.